湖東第一の町、彦根。ここは歴史の栄華をいまにとどめる城下町。
小高い山の上にそびえ立つ天守閣に、古い家並みに、情趣が漂います。
関ヶ原の合戦での大功で家康に認められ、彦根を封ぜられた彦根藩祖・井伊直政は、智勇に優れた武将でした。出陣のときは、全身赤一色の装束に身を固め、自ら先陣に立って戦場を疾駆。その赤鬼のごとき様子は“井伊の赤備え”と恐れられ、天下に勇名をとどろかせたものです。しかし、合戦での傷がもとで居城してわずか一年、享年四十二歳の若さでこの世を去っています。
彦根に立派な城を……そんな直政の遺志を継いだ実子・直継は、慶長八年(一六〇三)から実に二十年もの歳月をかけて築城。その完成とともに城下町も発展し、近世には近江随一の都市として繁栄しました。まさに天下に名だたる名城。その美しさゆえに明治の廃城令をまぬがれ、いまなお当時の面影をとどめています。
歴代藩主の中で最も名高いのは、十三代直弼でしょう。十一代直中の十四子として生まれた彼は、家督相続できない部屋住の身分で、青年期を「埋れ木舎(うもれぎのや)」で過ごします。この屋号は直弼自身が自らの境遇を埋木にたとえてつけたもの。彼はここで諸学を修め、禅の精神を茶に学びました。その後、時代の要請によって、長兄の跡を継いで城主に。黒船来航の年には江戸幕府の大老に就任、開国の断を下しました。反対一派を抑えるため“安政の大獄”を実施し、万延元年(一八六〇)、“桜田門外の変”に散ったその生涯は、史実に知られるところです。彼が学問に打ち込んだ埋木舎は、いまも彦根城の東、いろは松の傍らにその姿を残しています。
彦根は風光明媚の城下町にふさわしく、一年を通して風情たっぷりの祭りがたくさん催されます。その一部をご紹介しましょう。
彦根城下の梅六百本が咲き乱れるなか、日・祝日には茶会や琴会などが催されます。
桜まつり(4月1日~20日)彦根城を中心に、千三百本の桜が咲き揃うさまは、壮観。いちばんの見ごろは、だいたい十日過ぎ。
その起源は江戸時代。五節句の夏まつりに、笹竹を飾って祝ったのが始まり。各町内でおこなわれます。
玄宮園で虫の音を聞く会
(9月)仲秋の古城では、夜になると虫の音が賑やかに聞こえてきます。その風情とともに、邦楽や野点、船での大名庭園の回遊などをお楽しみいただくイベントです。
お城まつり
(10月下旬~11月初旬)十三代藩主井伊直弼の誕生日十月二九日の前後に、彦根城を中心に催されるまつりです。絢爛豪華な子供大名行列や風俗行列に始まり、筝曲野外演奏会、華道展、市民大茶会などがとりおこなわれます。